不定期連載
日本の未来 文・マリオ
プロローグ

もう12-3年も前になるだろうか。パソコン通信、ニフティ・サーブで青森フォーラムのシスオペ(議長)をやることになった。テーマを何にしようか迷った。ぼくが20歳の時10万円をポケットに世界32カ国を2年間放浪し日本へ帰って来た時感じた「日本人のアイデンティティ喪失」、それをテーマにした。

中世津軽から見た「日本」である。実はアメリカ、欧州、アラブ、インドを通して「現在の日本」を見ていたのだが。津軽の中世、鎌倉、室町時代はいまの時代とよく似ている。タタラ製鉄が盛んになり、鉄の生産が急激に進み、それにつれ農業生産も確実に伸び、公家の力が徐々に弱くなり、武士が台頭し始めた時代である。「もののけ姫」の時代である。

平清盛は港湾整備などの行政的手腕はすごかったが歴史の流れを読めなかった。それに比べ源頼朝、彼の政治的手腕に関してはたいしたことはなかったが、ただひとつ、次が「武士の時代」であることを察知し時の流れを見抜いたおかげで頼朝は鎌倉に幕府を開くことができた。為政者やリーダーにとり時流、時の流れを見極めることは非常に大切なことである。

現在の日本は工業社会から高度情報化社会へ向かって急激に社会が変化している。いわゆるIT革命の真っ只中である。この流れに日本は乗り遅れた。特にエリート集団がこの流れを読めなかったのが日本の不幸であった。時代はソビエト連邦が崩壊し冷戦が終了。米国の軍関係に集中していた1%のエリートがニューヨークのウォール街とシリコンバーレーへと向かった。しかし日本の1%のエリートはあいも変わらず東大を卒業すると官僚になり天下りを夢見ていた。

また中国は世界の生産工場となり安価な製品を大量に吐き出している。崩壊したソ連、現在のロシアは政治、経済、軍が混乱状態にあり、政府がコントロール不可能な状態に陥り、裏の社会、マフィアがロシアのすべてを闇で売りさばいている。この中国とロシアの影響で世界中に物が溢れ長期のデフレがはびこっている。

特に日本は海外からの騎馬民族、遊牧民族的詐欺師集団により円高の圧力を受け苦しんでいる。今年の3月日本の株価が下がり政府は空売りをやっとのことで規制し下げが止まった。米国は世界大恐慌での教訓をいかしこの詐欺師集団の空売りにたいして強力な罰則のある法律で規制している。日本はのんきなものだ。また時代は次の幕に移っているのにもかかわらず古い政治家、官僚、マスコミ、そして太平をむさぼっている「日本村人達」は古い体制を維持しようとしている。時代は国境が消え欧米白人といわれる無限空間を食いつぶすハイエナ人種の価値観になりつつあるのだ。

平均的な普通の日本人は優秀だがエリートとなると暗澹たるものである。古代ローマの格言に「100匹のライオンに1匹の羊のリーダーより、100匹の羊に1匹のライオンのリーダーの方が強い」というのがあるらしい。日本は前者で米国は後者である。日本には日産のカルロス・ゴンやワールドカップのトルシエ監督のような強力なリーダーが必要なのである。

日本のテレビ、新聞などを見ているとまだ「時流」を読み違えているように思う。またはまだ気が付いていないのか。そんなことはないと思うのだが。時代が20年も30年も止まっているような話をしているのである。この世の中に「流れが止まる」ということは物理的にありえない。この宇宙に存在するすべての物質は長い年月をかけすべて崩壊しまた再生しているのである。これは宇宙の真理である。方丈記の冒頭「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」またお釈迦様は「時と共に消え失せてしまう存在への執着によって起る苦悩から人々を解放すること」が目的であると言っている。時は止まっていないのである。

これから1-2年の長い時間をかけて現在ぼくが考えていることをいろいろと書いてみようと思っている。気の向くときだけしか書かないので次回はいつになるかわからない。この場を提供していただいた森田さんに深く感謝いたします。 。
高橋秋正(たかはしあきまさ)
1950年津軽生まれ。金沢区在住。
71-73年十万円で世界32ヵ国を放浪。
97年『ひとりぼっちの地球街道』出版。
「生命力」を与える写真を撮りつづけたい。
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